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高知赤十字病院DMAT隊員 武田先生(理学療法学科10期卒)が能登半島地震被災地支援活動から帰着!

2024.03.23

理学療法学科10期卒の武田陽平先生が、2024年1月、能登半島地震の被災地へ高知赤十字病院DMAT隊員として派遣されました。武田先生が活動を開始したのは、地震発生からわずか10日ほどが経った頃でした。まだまだ混乱期にあった被災地での活動は、どのようなものだったのでしょうか。帰着後、インタビューに答えて頂きました。

 

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1. まず、DMATとはどのようなチームか教えて下さい。

―災害急性期に活動できる機動性を持ったトレーニングを受けた医療チーム」と定義されており、災害派遣医療チーム isaster edical ssistance eam の頭文字をとって略して「DMAT(ディーマット)」と呼ばれています。医師、看護師、業務調整員で構成され、大規模災害や多傷病者が発生した事故などの現場に、急性期(おおむね48時間以内)から活動できる機動性を持った、専門的な訓練を受けた医療チームです。

現在では、現場の医療だけでなく、災害時に多くの患者さんが運ばれる、被災地の病院機能を維持、拡充するために、病院の指揮下に入り病院の医療行為を支援させて頂く病院支援を行っています。また、首都直下型、東海、東南海・南海地震など想定される大地震で多数の重症患者が発生した際には、平時の救急医療レベルを提供するため、被災地の外に搬送する、広域医療搬送など、機動性、専門性を生かした多岐にわたる医療的支援を行います。

 

2. 武田先生ご自身の位置づけを教えて下さい。また、チームは何名で構成されていましたか?

―基本的なDMAT1隊の編成は、出動される病院によって異なりますが、通常は医師1~2名、看護師1~3名、業務調整員1~2名で構成されます。高知赤十字病院は、医師1名、看護師2名、業務調整員2名で出動しました。業務調整員に任命される職種は、事務職員と院内コメディカルの職種(理学・作業・言語聴覚士、臨床工学技士、臨床検査技師,薬剤師,放射線技師など)で構成され、日常業務とは全く異なる災害医療業務に従事します。

私のように理学療法士がDMAT隊員になった場合には業務調整員という役割が与えられます.

高知赤十字病院のDMATの皆さん

 

3. 派遣された場所と期間を教えて下さい。

―派遣場所としては、まず全DMATは参集拠点場所である能登医療圏DMAT活動拠点本部(能登総合病院内)へ参集します。そこで指示を受け、我々高知赤十字病院DMATは公立穴水総合病院の支援活動を行うことになりました。活動期間は1月12日午後から17日の約6日間の活動です。支援活動の目的は、いかに早く公立穴水総合病院が平時の救急医療レベルを提供できるよう、その病院に入り支援させていただくことです。我々高知赤十字病院DMATの任務は、病院指揮として公立穴水総合病院支援指揮所の本部活動(患者搬送、ER業務、物品管理、その他雑務の指揮を行う支援)でした。

デスクワーク中の武田先生

 

4. 隊員の健康管理も重要だと思います。ご自身の健康管理はどのようにされていましたか?

―DMATは自己完結が基本、衣食住は自分たちで手配することが基本原則ですので、現地では持参してきた食料や寝袋でキッズスペースをお借りして5連泊させていただきました。

日頃から健康管理には気をつけながら生活をしています。私自身、キャンプや釣りといったアウトドアなどの休日の活動が自然に災害時の衣食住の訓練になっているので、現地での活動において健康管理はそれほど心配はいりませんでした。ただ、まだ水道や下水が復旧していないため、衛生面の影響で発熱や下痢などの感染症が多くなってきており、その面では自分含めた各隊員の体調の変動には注意を要しました。

待機・宿泊場所の様子

 

5. 南海トラフ地震では能登の震災被害と重なる点が多くなるだろうといわれています。どのような点が重なると思いますか?

―今回の能登半島地震の被害は半島特有の地形が影響して全容把握が困難な状態が続いています。現地への道路の土砂崩れや亀裂による寸断は、復旧がなかなか見通せず、捜索や支援は端々まで届いていません。

南海トラフ地震においても同様もしくはそれ以上のことを想定しなければなりません。高知県は山が多く、1つの道路が潰れると孤立状態になる地区がたくさんあり、また支援に来られる様々な機関は陸路からは難しいのではないかと思います。海はどうかというと、津波による浸水や地形変動などで海上からの輸送もスムーズにいけるとは限りません。発災後は高知県全域が孤立状態になることを想定した対策が必要になるのではないかと思います。

 

6. 被災地に入ることに恐怖心はありませんか?

―恐怖心というよりは、被災地の方々にどれだけ我々の力を還元できるか、任務を無事に終えるかといった不安はありました。

 

7. 普段はどのような研修を受けていますか?

―通常は理学療法業務や関連する研修や学会に参加していますが、DMAT隊員となれば、理学療法の専門業務以外のスキルが求められます。そのためには病院内の災害訓練の計画や参加、日本赤十字社の各県支部合同災害救護訓練、院外の訓練(高知市や高知県が主催する総合防災訓練、内閣府主催の大規模地震時医療活動訓練、空港での航空機事故救急医療部訓練、海上自衛隊との洋上訓練など様々な機関との訓練)に参加していく必要があります。今思えばコロナ禍前は1~2か月に1回は訓練に参加していたように思います。

またDMAT隊員としての任期は5年であり,その間にDMAT事務局が主催する規定の技能維持訓練にも参加しいく必要があり、実際に参加をしています。

このように、活動に必要と考えられる技術を磨くことや外部への研修にも積極的に参加していき、技術や知識だけでなく、日ごろから隊員としての資質を磨くことも重要だと思っております。

 

8. 災害被災地の支援活動に興味を持っている学生に、メッセージをお願いします。

―学生で災害被災地の支援活動に興味を持っている時点で、苦しんでいる人を救いたいという気持ちがあるため、私から伝えることはないに等しいと思っております。私自身、卒業後の高知赤十字病院という環境が災害への興味から支援したい気持ちへと育てて頂いたと感じております。

メッセージを送るとすれば、日本赤十字社の「人間を救うのは、人間だ。」というスローガンを送らせていただきます。これは、人道を実現するための行動「救う」を力強く表し、具体的な行動につなげるメッセージが込められております。この「救う」という気持ちをもって学内生活を悔いなく過ごし、成長していただけるよう期待して、回答を終えたいと思います。

武田先生 土佐リハでの授業の様子

 

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仕事の日も休日も、普段からとてもアクティブな武田先生。身の回りで起こる様々なことに興味を持ち、自分から情熱をもってアクションを起こして欲しいと話しています。

2023年度から、学生は3年次での「災害医療」の授業の受講が必須になりました。今回、武田先生から貴重な生の声を頂きました。学生達には今のうちから意識を向け、支援活動に専門家として参加する準備にも取り組んで欲しいです!

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